昔々 中尾村のお百姓さんが里へ農作物を売りに出た帰りの事、いつもより帰りが遅くなってしまい、
神坂部落を通ったときにはもう、あたり一面まっくら闇となっておった。
男はひたすら家路を急ぐのだが、いけども いけども同じ場所をぐるぐる廻っているように思えてならなかった。
家に着くまでにはまだ谷を越え、もうひと山登らなくてはいけないのに
男は次第にあせりだした そうこうするうちに、どこからともなく
ポツン ポツンとちょうちんが灯って その行く先は反対方向の八王子の山の中に入って行くではないか
不思議に思っていると今度は、太鼓の音があちらこちらから聞こえ出し
後ろから何かにじっと見られているように 背筋がゾォー と冷たくなってきた
男は慌てふためき 『これが噂に聞いた狐やむじな(狸)そして狼の仕業に違いない
そうか、こいつらが送り狼というやつか こいつら俺を取って食おうとしているに違いない 村の衆助けてくれー』
とにかく男は大急ぎで逃げるのだが、もう体力は限界に近くなってきて 『もうダメだー』 と諦めかかったその時、
ふと足元の谷川を見て思った『そうだ、あいつらは家の中までは追ってこないと聞いた事がある
わしらは家に帰ったらいつも玄関で足を洗って入るじゃないか おーい みんな家まで送ってくれてありがとうよ
俺は無事に着いたから 今から足を洗って家に入るぞ だからみんな、安心して帰ってくれよぉ』 と
大声を張り上げて、家にはほど遠い谷川で自分の足をバシャバシャと洗い始めた
するとどうしたものか
今までの野火や太鼓の音、そして背筋の悪寒が サッ と消え去ったではないか。
『 あー 助かった 』 男は腰が抜けたかのようにその場にへたり込んでしまった
それ以来、中尾部落の衆はどこかに行った帰りには必ずその谷川で足を洗い
清めて中尾部落に帰って来るようになり、いつしかその谷を《足洗いの谷》と
言うようになったという事です
(この昔話は、谷旅館の亭主が子供の頃に 大じいちゃんより 寝物語に聞いていたものを 思い出し
「足湯」 にまつわる伝説として 書き記してみたものです)
足を洗って家路に着く
お客様の家路は この 中尾
皆様の癒しの里への玄関口 【足洗いの湯】(足湯)につかり
≪ ふるさとの宿 谷旅館 ≫へとお運びください
足湯まで徒歩5分です